タイにおけるパームプランテーション(アブラヤシ農園)の歴史は、国内外での食用油の需要増加に伴い発展してきました。油ヤシは主にパーム油を生産するために栽培されており、パーム油は世界で最も消費されている植物油の一つです。タイは世界の主要なパーム油生産国の一つであり、インドネシアやマレーシアと並ぶ生産量を誇ります。そもそもアブラヤシとは何?アブラヤシ(学名: Elaeis guineensis)は、アフリカが原産のヤシ科の植物で、その実から抽出される油(パーム油)が世界的に重要な食用油として利用されています。アブラヤシの実は、外側の果肉(メスオカープ)と内側の核(種子)の二つの部分から油を抽出でき、果肉からは赤みを帯びたパーム油が、核からはより固形のパーム核油がとれます。アブラヤシの歴史アブラヤシは元来、西アフリカが原産であり、19世紀にイギリスとオランダの植民地当局によってそれぞれマレーシアとインドネシアに導入されました。マレーシアにおけるアブラヤシ栽培の始まりは、1917年にセレンゴール州で最初のプランテーションが設立された時に遡ります。しかし、アブラヤシ産業が本格的に発展し始めたのは、1950年代と1960年代からで、マレーシア政府が農業の多角化を推進し、ゴムプランテーションの一部をアブラヤシに転換する政策を取ったことが契機となりました。1970年代に入ると、世界的なパーム油の需要が高まり、マレーシアはこの新たな市場機会を捉えてアブラヤシ栽培面積を大幅に拡大しました。政府は積極的にアブラヤシ産業を支援し、研究、品種改良、生産技術の向上などに投資しました。これらの取り組みにより、マレーシアのパーム油生産量は世界のパーム油市場での主要な地位を確立しました。実はアブラヤシの実を陸路で持ってきてしまった?!タイのパームプランテーションの歴史は、このマレーシアの劇的な発展を垣間見たところから始まります。1970年代、タイ南部でゴムの木を植林して生計を立てていた農家が突如、陸続きから見える隣国マレーシアがゴムの木を伐採してパームプランテーションに変えたことを見ました。また彼らはアブラヤシがお金になる、という噂を聞きつけて真似をするようになります。諸説ありますが、タイの農家はマレーシアに陸路でわたり、落ちていた実をかき集めて、タイに持ち帰り植え始めたといいます。2024年現在、タイ南部4県を合わせてタイのパーム生産量がマレーシア、インドネシアと肩を並べます。1980年代から1990年代にかけて、世界市場でのパーム油の需要が高まるにつれて、タイのパーム油産業は顕著な成長を遂げましたが、マレーシアのように品質が安定せず、またすぐに枯れてしまっり、思うように育たないという悩みが後を立ちません。これには落ちていた実を拾ったことで「弱い個体を持ち帰ってきてしまったから」と当時の背景を知る農家はいいます。そこでしばらくしてパームプランテーションに転機が訪れます。タイ南部は台風による被害が後を絶たない地域なため、ある日パームプランテーションが洪水で流されてしまったことから、タイ政府が支援を始めます。ここでようやくアブラヤシの実を正式に海外から取り寄せて研究をするようになり、今の形にいたります。バイオマス燃料のパームプランテーションと環境問題パームプランテーションの拡大は環境問題を引き起こすこともあります。例えば、森林伐採による生物多様性の損失、土壌の劣化、水資源の汚染などが挙げられます。近年タイでは、持続可能なパーム油生産を目指して、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil、持続可能なパーム油のための円卓会議)の認証を受けた農園が増えてきています。環境保護や社会的責任を考慮した生産プロセスを推進するものです。それでも、アブラヤシの実を収穫した後のアブラヤシの幹は使い物にならず、パームプランテーション内で放置されて、メタンガスを発生する要因となり現在でも環境問題となっています。OPTペレット(バイオマス燃料)はパームプランテーションの救世主になるか?!ここ数年、パームプランテーションの農家たちはパーム製品の品質を向上させるため、新しく品種改良された実に植え替えをはじめています。これまで家計を支えてきた古木の実を収穫したら、切り倒して放置するか、育成せずに放棄をしてきました。またパーム搾油工場も加工の手間がかかるため、利用に難色を示していたことにより、これらの未利用のパームトランクが原因で発生するメタンガスは、環境汚染の一因となっています。弊社ではこの未利用だったパームトランクを燃料化し、火力発電に再利用することで、環境問題の解決だけでなく、パームプランテーションの農家にとっても、プランテーション内の廃棄物処理ができるので、ウィンウィンな関係を築けてます。サステナブルな供給量と日本品質基準タイ全体で106万ヘクタールに及ぶパームプランテーションからは、年間最大2億1000万トンのパームトランクが収穫されることから、弊社では安定した供給を確保しています。これまで、パームトランクなどの植物由来燃料に含まれる高濃度の塩素やカリウムは、炉を傷める要因となり、日本での使用に適さないとされてきました。弊社では、特殊な工程を通じてこれらの不要な物質を1500ppm以下まで削減し、日本のバイオマス発電所で安全に使用できる品質を確保しました。2024年2月現在の生産量は1日25トンです。