バイオマス燃料であるペレットから生産国、日本での消費など詳しく解説バイオマスとは化石燃料を除いた生物由来の資源を指しており、このバイオマスから得られえるエネルギーは再生可能エネルギーに分類されています。バイオマスは主に木材を原料としてペレットに加工され火力発電の燃料として用いられています。日本のバイオマス発電の発電量は増加傾向にあり、気候変動対策やカーボンニュートラル達成に向けて、将来的にもバイオマス燃料のペレットを用いた発電量は増加していくと予想されています。本記事では、バイオマス燃料となるバイオマス燃料のペレットの概要、製造プロセス、利点などについて詳しく解説します。バイオマス燃料のペレットとは?バイオマス燃料のペレットとは、燃焼させやすいように木片を圧縮加工したものです。通常は円筒形の形状に加工されており、木質ペレットとも呼ばれています。バイオマスペレットは主に木材加工時に排出される木くずや端材などから加工されており、廃材が有効利用されています。バイオマスペレットを作るために、木くずや端材などの原料は細かく粉砕されており、圧縮した際に固まりやすいように適度に乾燥させ、水分調整がなされています。バイオマスペレットは固まっていますが、これは木に含まれるリグニンによります。木くずを圧縮した際、圧力により木に含まれているリグニンが滲み出てきます。リグニンは接着剤のように固まる性質があるので、圧縮後の木くずはリグニンの作用により固まり、ペレットの形状に成形されます。また、木材中にはワックス成分も含まれており、ペレットの表面は木くず中のワックス成分により滑らかになっていることも特徴です。表面が滑らかであることはペレット同士が接触しても滑るので引っ掛かりにくく、原料供給がしやすくなります。ペレットの種類バイオマスペレットには原料や加工により幾つかの種類に分けられますので、種類ごとに解説いたします。木部ペレット(ホワイトペレット)木部ペレットは主に木質部分を原料にして製造されたペレットで火力が強い上に燃焼効率がよく、燃焼後に出る灰の量が非常に少ないです。樹皮ペレット(バークペレット)樹皮ペレットは木材の樹皮を原料として製造されるペレットです。木質部分は燃焼効率が良いですが、樹皮部分は燃焼しにくく燃料としての質は落ちます。燃焼後には大量の灰が排出されるために定期的な灰の除去作業が必要になるため、バイオマス発電の燃料としてはあまり適していません。全木(混合)ペレット全木ペレットは木全体を原料として製造されるペレットです。ペレットの材料には木質部分と樹皮部分がありますが、全木ペレットはこの両者を原料にして作られます。ブラックペレットブラックペレットは木材を炭化させたペレットです。成分はほぼ炭素で出来ている上、水分が除去されているため、その分燃焼効率が高く、軽いので輸送に適しています。一方で、加工のコストがかかるという欠点もあります。これらの中から適した種類が選択され、発電に利用されます。製造プロセスと品質管理バイオマス燃料のペレットの製造にはいくつかのステップがあります。最初に行うことは原料の選定です。バイオマス燃料のペレットは基本的に間伐材や製材工場で出る端材や農業廃棄物など、燃焼するものを原料として使用します。この原料の質はペレットの品質に大きく影響します。もちろん、副産物ではなく木材自体からもペレットを作ることが出来ますが、木材を原料にした場合には森林破壊につながるという懸念がなされています。集められた原料は乾燥させられ、水分含有量の調整が行われます。水分含有量を10%から15%程度に調整することでリグニンが固まりやすくなり、ペレット状に成型しやすくなります。水分量が多すぎると固まりにくい上に燃えにくく、水分量が少なすぎると成形が難しくなります。このため、燃焼効率と成形のしやすさから、10%から15%程度の水分量が適しています。その後、原料は細かく粉砕されて均一なサイズに整えられます。粉砕された原料は型に入れられ高温、高圧で圧縮されます。成形直後は高温なので冷却されると共に、冷却に伴いリグニンが固まりペレットとなります。ペレットは高圧で圧縮されているので密度が高く、木材と比べると体積当たりの燃料効率は高いという特徴があります。ペレットが完成すると品質管理として検査が行われ、品質基準を満たしているか確認されます。品質が基準を満たしているとパッキングされて出荷されます。バイオマスペレットの使用についてバイオマスペレットは主に火力発電の燃料として使用されています。バイオマス燃料を用いた火力発電は仕組としては石油や石炭を用いた火力発電と同じで、燃料を燃焼させて熱を得ます。この熱で水を沸騰させて高圧の水蒸気を作り出し、この蒸気を使ってタービンを回転させて発電させます。石油や石炭などの化石燃料とバイオマスペレットは燃焼させるので、燃焼に伴い二酸化炭素を排出させます。しかし、バイオマスペレットは元々植物が大気中の二酸化炭素を吸収して作られていますので、燃焼させて出来た二酸化炭素は大気とペレット間で循環しているため、バイオマスは再生可能エネルギーとみなされています。バイオマスペレットのメリットバイオマスペレットの最大の利点は再生可能エネルギーであることです。現在、気候変動対策により温室効果ガスの排出削減が世界的に求められています。このため、従来の化石燃料を用いた火力発電は敬遠されています。しかし、化石燃料の代わりにバイオマスペレットを用いることで火力発電でも再生可能エネルギーによる発電が行えます。火力発電は発電時間を選ばずに発電量の調整も行えますので、太陽光や風力発電などと比較して安定して発電できるというメリットがあります。バイオマスペレットを使用することで、この火力発電の持つメリットを生かすことが出来ます。バイオマスペレットは植物から出来ていますので、化石燃料の埋蔵がない地域でも生産できるため、エネルギーの自給自足に繋がります。これにより、燃料の海外依存度が減るため、エネルギーコストの安定化に繋がります。さらに、バイオマスペレットは燃焼効率がよく、高いエネルギー効率を持っています。成形されていますので扱いやすく、輸送しやすいというメリットもあります。このため、産業用のみならず、家庭用のストーブなどとしても使用可能となっていますので、家庭からの二酸化炭素排出量を減らせるというメリットもあります。問題点とは?バイオマスペレットの問題点は環境破壊につながっている可能性があることです。バイオマスペレットはそもそも木材の端材など、加工で出た副産物を廃棄せずに有効利用することで作られていました。しかし、近年ではバイオマスペレットを作る目的で森林の自然回復量を上回るペースでの森林伐採が疑われており、環境破壊への懸念が出ています。また、木材加工時などの副産物を使用した場合は供給量が限られてしまう上、海外産のペレットを輸入すると為替レートなど外的要因に影響を受けてしまい、流通量のみならずコスト面でも安定供給が出来ない可能性もあります。これに加えて、バイオマスペレットの燃焼後には灰が出るので、この処理に手間がかかるという問題点もあります。利用可能な分野とは?バイオマスペレットは普及に伴い、様々な分野で利用が広がっています。火力発電では、バイオマスペレットはボイラーで燃焼されます。ボイラーは火力発電のみではなく、一般的に広く使用されていますので、バイオマスペレット用のボイラーも登場していて産業界で広く使用されています。バイオマスペレットを使用することで二酸化炭素の排出が抑えられるので、カーボンニュートラルの実現に向けて、今後もバイオマスペレットを燃料としたボイラーの普及は拡大して行くと思われます。その他にも、家庭用ストーブの燃料としても注目されています。バイオマスペレットは小型で取り扱いやすく、表面が滑らかなためストーブへの燃料供給を自動化した場合、途中で詰まらずに安定して供給が可能となっています。このため、家庭用のストーブの燃料としても使用されています。バイオマスペレットを取り巻く状況バイオマスペレットは再生可能エネルギーであるため、近年の気候変動対策及び環境保護の意識の高まりと共に注目が集まっています。実際、バイオマス発電の導入量は以下のグラフの通り年々増えており、バイオマス発電による発電量もバイオマス発電の導入量に従い伸びています。また、2021年から2025年にかけては大きく伸びることが予想されており、2030年まで右肩上がりに増えて行くと予想されています。特に木質バイオマスを燃料としているバイオマス発電が全体の導入量の9割程度あるため、バイオマスペレットの需要は年々高くなると予想されます。出典P3, https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryokugas/saiseikano/pdf/0300300.pdfバイオマスペレットの需要が高まるのは日本だけではなく、カーボンニュートラルへ向けて諸外国での需要も高まると予想されますので、バイオマスペレットの需要は世界的に高まっていくとことになります。バイオマスペレットの供給量に関してですが、バイオマスペレットを製造する際には過剰生産による森林破壊に繋がらないように生産量を調整しなければなりません。つまり、バイオマスペレットの供給量に関しては地域によっては生産量を増やせない可能性もあります。他にも需要の高まりを受けて価格競争が起こり、バイオマスペレット価格の高騰する恐れもあります。このように、バイオマスペレットを取り巻く状況には不安定要素がいくつか存在しています。バイオマスペレット市場再生可能エネルギーの需要の高まりと共に、バイオマスペレットの市場は急速に拡大しています。世界の木質ペレット市場は 2024 年に 194 億 8000 万米ドルに達し、2032 年までに 328 億 8000 万米ドルに達すると予測されています。主な生産国はアメリカ、カナダ、ロシア、タイ、ベトナムなどであり、日本を始めとしてヨーロッパ諸国などに輸出されています。 出典: https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E6%A5%AD%E7%95%8C-%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88/%E6%9C%A8%E8%B3%AA%E3%83%9A%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E5%B8%82%E5%A0%B4-100877日本の木質ペレットの現状と将来以下のグラフは日本における木質バイオマスペレットの輸入量の年間推移を示したグラフですが、木質ペレットの輸入量も右肩上がりで増えていることが分かります。つまり、日本におけるバイオマスペレットの需要は将来的に右肩上がりで増えて行くと予想されます。出典:https://www.psinvestment.co.jp/small_talk/biomass-power-generation/以下のグラフは国産バイオマスペレットの生産量の年間推移を示しています。このグラフから、令和4年(2022年)の日本国内のバイオマスペレットの生産量は約15.8万トンでした。原料として使用された樹木は杉と檜、松が多く、針葉樹が多く使用されています。令和4年(2022年)の輸入量と合わせたバイオマスペレットの総供給量は約456.5万トンでしたので、国産バイオマスペレットの供給量は総供給量の3.5%程しかなく、大部分を輸入に頼っていることが分かります。バイオマスペレットの生産量は年々増加していますが、一方でペレットの生産を行う工場の数は平成30年(2018年)をピークに徐々に減っています。このため、将来的には国産バイオマスペレットの生産量は低下する可能性も考えられるため、国産バイオマスペレットの生産量は不透明と言えます。出典:https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/attach/pdf/w_pellet-6.pdf出典:https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/attach/pdf/w_pellet-6.pdf以下のグラフは日本のバイオマスペレットの輸入国と輸入量の年間推移を示しています。近年で最も多い輸入国はベトナムであり、その次はカナダです。この2国にアメリカを加えた3国からの輸入量は全体の9割程度となっています。特にベトナムからの輸入量は2015年(平成27年)以降、急激に伸びており、2022年(令和4年)では全体の輸入量の半分以上を占めるに至っています。しかし、2022年にベトナム大手ペレット製造企業が製造したバイオマスペレットで森林の管理を認証するFSC認証の偽装が発覚しており、信用問題となっています。このため、将来的にベトナム産のバイオマスペレットの輸入量が増えて行くかは不透明です。出典:https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/attach/pdf/w_pellet-6.pdfベトナムに代わるバイオマスペレットの輸入先として注目を集めているのがタイです。タイはバイオマスペレットの生産を強化しており、品質は高いと言われています。このため、多くの企業から注目されており、今後は日本への輸出量も増えていくと思われます。再エネ普及率を向上させるにはバイオマスペレットの安定供給が不可欠バイオマスペレットは、再生可能エネルギーの一つとして重要な役割を果たしています。環境面、エネルギー自給面、技術面で利点を持つバイオマスペレットは、持続可能なエネルギー供給を実現するための有望な手段であり、再エネ自給率を向上させるためにも注目されています。一方で、再エネ自給率を向上させるにはバイオマスペレットの安定供給が不可欠です。今後も、技術革新や政策支援を通じて、バイオマスペレットの利用拡大が期待されます。