地球温暖化を抑止するための脱炭素施策として、再生可能エネルギーの推進は重要です。なかでも太陽光発電は日本での市場が拡大しています。本記事では太陽光発電の日本市場における規模や動向、さらに課題や将来性まで詳しく解説します。脱炭素施策や日本市場における太陽光発電について学びたい方は、ぜひ参考にしてください。日本市場における脱炭素領域脱炭素とは、地球温暖化を加速させている温室効果ガス削減活動の総称です。日本でも「カーボンニュートラル2050」により、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることが宣言されました。そのため近年脱炭素領域は、日本市場に大きな影響を及ぼしています。特に太陽光発電を含む再生可能エネルギー分野における事業は急拡大しています。では、なぜ脱炭素は重要なのでしょうか?なぜ脱炭素が重要なのか?世界の平均気温は産業革命以後すでに1.1℃上昇しています。2023年は観測史上最も暑い年を記録し1.45℃上昇を記録しました。IPCCはCO2の累積排出量と、世界の平均気温の上昇は比例関係があると報告しています。地球温暖化による気候変動を抑止するためにも、脱炭素は早急に推進される必要があります。出典:「世界の年平均気温偏差の経年変化(1891〜2022年)」(気象庁)日本の新成長市場脱炭素領域とは脱炭素領域とは、温室効果ガス削減に関連した事業領域のことです。再生可能エネルギーや温室効果ガス排出量の算定や視覚化、新技術開発など事業は多義に渡ります。国もGX推進では2兆円に及ぶグリーンイノベーション基金を設立するなど、巨額の投資を計画しており、注目の新成長市場と言えるでしょう。なかでも再生可能エネルギー分野の急成長は目を見張るものがあります。急成長する再生可能エネルギー分野再生可能エネルギーとは温室効果ガス排出せず、自国の自然から生産可能でほぼ永続的に使用できる持続可能なエネルギーのことです。資源エネルギー庁に定義されている代表的な再生可能エネルギーを簡単にご紹介します。太陽光発電太陽光発電は、太陽光のエネルギーを太陽光パネル(シリコン半導体)に当てることで直流電気を発生させます。そしてパワーコンディショナーを通し、家庭で使用可能な交流電気に変換する仕組みです。風力発電風の力でタービンを回転させることにより発電する仕組みです。近年は洋上風力発電の開発が進んでいます。地熱発電地中深くにあるマグマの熱で発生した蒸気エネルギーによって発電する仕組みです。火山大国であるポテンシャルが高い再生可能エネルギーと言われています。水力発電水を落下させ水車を廻し、そのエネルギーによって発電する仕組みです。近年は大規模なダム開発が困難なことから、小規模な中小水力発電が主流です。バイオマス農林水産省は「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」をバイオマスエネルギーと定義しています。バイオマスエネルギーを利用し発電する仕組みがバイオマス発電です。参照:なっとく!再生可能エネルギー「再生可能エネルギーとは」(資源エネルギー庁)日本の再生可能エネルギーの電力比率は2021年度で、約20.3%になり、再生可能エネルギーの発電設備容量は世界第6位となっています。日本市場における太陽光発電とは日本で一番利用されている再生可能エネルギーは、太陽光発電です。生産した電力を一定期間固定価格で買いとるFIT(固定価格買取)制度の策定によって、太陽光発電は日本で最も導入量の多い再生可能エネルギーとなりました。国土面積あたりの日本の太陽光導入容量は、主要国の中では最も高く世界第3位です。日本の太陽光発電導入状況2012年7月のFIT制度開始により、太陽光発電の導入は2011年度0.4% から2021年度には8.3%に上昇と大幅に増加しています。さらに政府はエネルギー基本計画で、2030年度の電源構成における再生可能エネルギーの比率を36~38%へ引き上げる計画です。太陽光発電はそのなかで14~16%の比率を見込んでおり、今後さらなる導入が見込まれるでしょう。参照:太陽光発電の政策動向(資源エネルギー庁)自治体による太陽光発電義務化すでにいくつかの自治体が太陽光設備設置の義務化制度を開始しています。京都府は京都議定書発祥の地でもあり、早くから積極的な再生可能エネルギー導入推進を行っています。現在制度を開始している代表的な自治体をご紹介します。自治体条例名京都府京都府再生可能エネルギーの導入等の促進に関する条例群馬県2050年に向けた「ぐんま5つのゼロ宣言」実現条例福島県大熊町大熊町ゼロカーボンの推進による復興まちづくり条例この他にも太陽光発電義務化設置を施行予定の自治体があり、将来的には全国に波及することが予想されます。世界では2050年に太陽光発電が50%超を占める世界の太陽光発電新規導入量は、2022年度240 GWに及び、2016年と比較して6倍に拡大しています。さらに英国の名門エクセター大学は、2030年までには、コストが蓄電池費用込みでも世界中で最も安く、石炭火力の2分の1になるという研究結果を発表しました。それにより「2050年に太陽光発電のシェアは過半となる」と報告しています。参照:脱炭素の中心は太陽光発電に、止まらぬ投資で競争力高まる(日経エネルギーNEXT)太陽光発電の日本市場規模近年日本市場の太陽光発電分野では、「自家消費型太陽光発電」と「PPAモデル」市場が伸長しています。「自家消費型太陽光発電」とは、太陽光発電で生産した電力を自家消費することで、省エネや電気代の削減につなげることが可能です。2019年時点、日本では約47万世帯が自家消費型太陽光発電を導入し、市場規模は793.3億円です。自家消費型太陽光発電は災害時の非常用電源としても有効なため、注目が高まっています。将来的に自家消費型太陽光発電市場の拡大が見込まれます。一方「PPAモデル」とは「電力販売契約」のことです。「電力販売契約」とは、需要家が直接発電所を選び電力購入を行う方法で、「第三者モデル」とも呼ばれています。確実に再生可能エネルギーを導入できるモデルとして市場が拡大しており、世界各国で 2019 年に新たに結ばれた「PPAモデル」 は 1950 万kWにものぼりました。日本市場における太陽光発電の課題太陽光発電は日本の再生可能エネルギーの主力として有望です。しかしFIT(固定価格買取制度)の終了、太陽光パネルの大量廃棄問題のような課題も存在します。卒FITとも呼ばれるFIT制度の終了とは、2019年から買い取り期間が順次終了するということです。そのため卒FIT後は買取価格が下がるため、売電収入が大幅に減少します。さらに太陽光パネルの廃棄問題も課題です。太陽光パネルは2030年代後半には、最大年間50〜80万トンの廃棄が予想されています。そのため、政府は低コストで再資源化を行うなど太陽光パネルのリユース・リサイクル事業の推進を図る予定です。太陽光発電の日本の政策動向と将来性日本政府は太陽光発電導入促進のために、住宅や工場・倉庫などの建築物への導入拡大に向けて、FIT制度・FIP制度において一定の活用要件の緩和を実施します。さらに屋根への導入に係る入札免除や、ZEHに対する補助、初期費用を低減した太陽光発電の導入モデルの構築に向けた補助金等による導入を推進していく方針です。FIP制度をはじめとしたさまざまな補助制度太陽光発電導入拡大に向けて、策定された補助制度についていくつかご紹介します。FIT・FIP制度FIT,FIP制度は太陽光発電で発電された電気を買い取ることにより、安定的な運営を支援します。FIP制度はさらにプレミアムを付与することで再生可能エネルギーの導入を拡大する制度です。オンサイトPPA等補助金(環境省・経産省連携事業)工場等の屋根などに太陽光パネルを設置して自家消費する場合など、設備導入費用を補助する制度です。ZEH(ゼッチ)に対する支援(経産省・国交省・環境省)熱効率の良い設備や太陽光発電などを活用し、「省エネ」や「創エネ」をすることでエネルギー収支を正味ゼロにする住宅ZEHの導入費用を補助する制度です。省エネリフォーム税制(国交省・経産省)住宅の省エネ改修に対して、太陽光発電設備を設置した場合、所得税の税額控除について、は通常よりも最大10万円控除額を上乗せします。参照:太陽光発電の政策動向(資源エネルギー庁)次世代太陽電池ペロブスカイトの可能性次世代太陽電池としてペロブスカイト太陽電池が注目されています。電荷輸送能力が高く、軽くて柔らかいという特徴を持つペロブスカイト太陽電池は、太陽光発電の設置場所の課題を解決できる可能性があります。政府はペロブスカイト太陽電池産業化に向け、「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」を立ち上げました。2030年の実用化を目指し、ペロブスカイト太陽電池の基盤技術の開発や、製品レベルの大型化を実現するため各種技術の確立に向けた研究開発を行います。これらの政策による補助や新技術開発により、日本市場における太陽光発電の存在感はますます向上していくでしょう。まとめ太陽光発電が日本市場においてどのような位置づけにあるのかを、さまざまな角度から解説しました。脱炭素推進において再生可能エネルギーがいかに重要かご理解いただけたのではないでしょうか。今後、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー分野は、日本市場に欠かせない存在となることは間違いありません。ぜひ本記事で太陽光発電や日本市場における脱炭素領域の知見を深め、脱炭素化推進の一助としてください。