スーパーフードやバイオエネルギーとしても注目されているソルガムですが、牛やヤギ、ヒツジなど家畜の飼料としても有望なのをご存じですか。今回は飼料として世界でも多く栽培されているソルガムについて、特徴から飼料としてのメリットまで詳しく解説していきます。家畜の飼料としてソルガムを検討したい方はぜひ参考にしてください。ソルガムとはソルガムとは、南アフリカ原産のイネ科の穀物で世界5大穀物のひとつです。品種が豊富で乾物生産性に優れており、線虫対抗作物としてやドリフトガード作物としても利用されています。生育が早く再生性や生産量が高いという特徴があります。ここではソルガムの特徴について、以下のポイントから詳しく解説していきましょう。ソルガムの特徴再生力と生産性に優れている幅広い活用法栄養価が高いバイオエネルギーを生産再生力と生産性に優れている穀物であるソルガムの最大の特徴として、トウモロコシ以上の生産性があるため、労働力とコストを低減可能なことが挙げられます。再生草を利用することで1度の播種で2回以上収穫が可能です。特にスーダングラス類は再生力が高く、品種によっては年に3回の収穫ができます。ロールベールの利用ができる穀物では、収量性が最も高い草種です。幅広い活用法ソルガムには次の5つの種類があります。草丈が 5m程度と比較的小柄で子実割合の高い子実型丈が5m以上 と大柄で茎葉の割合が高いソルゴー型草丈が 2m前後の兼用型茎が細く、分げつ(ぶんげつ)の多いスーダングラス子実型スーダングラスの一代雑種であるスーダン型これらの5つの特徴を活かすことで、サイレージや青刈り、ロールベールなどさまざまな場面に幅広く活用できます。逆にそれぞれの特徴をしっかり掴んでおかなくては、ソルガムの特徴を発揮することはできないと言えるでしょう。栄養価が高いソルガムは健康食品としても注目されるほど栄養価が高いのが特徴で、GABA、食物繊維、ポリフェノールを多く含有しています。家畜の飼料としては、消化吸収が良く、家畜の成長と健康に必要なタンパク質を豊富に含んでいます。さらにビタミンとミネラルも豊富で、家畜の免疫力を高め、全体的な健康状態を向上させます。またソルガム類により多く含まれる「酸性デタージェント繊維」や「中性デタージェント繊維」といった繊維分は、反芻動物である牛などには重要であり、家畜の消化器系に優しい飼料です。参照:「飼料用ソルガム類の特徴と 優良品種のご紹介」(雪印種苗株式会社)クリーンエネルギーとして活用可能ソルガムは石炭と混焼が可能なバイオマス発電燃料用植物として有望視されており、すでに実験も行われています。半炭化したソルガムの木質ペレットは、耐水性・粉砕性などに優れ、石炭と同様に取り扱うことが可能です。そのため石炭火力発電におけるCO2排出量を低減できるクリーンエネルギーとしての期待が高まっています。さらにソルガムはマメ科緑肥に比べて炭素貯留効果が高いと言われています。炭素貯留効果が高いことは、カーボンニュートラルの促進にもつながります。出典:バイオマス活用における注目技術・要素③-ソルガム(一般財団法人新エネルギー財団)飼料としてのソルガムのメリット牛やヤギ、ヒツジなどの家畜は1年間にどれだけの飼料を必要とするのでしょうか。おおよその量をご紹介しましょう。家畜の種類飼料の量牛粗飼料※3トン山羊とめん羊0.3トン※草や草を原料としたエサで、繊維質が多く含まれている飼料。出典:家畜は1年間にどれだけの飼料を必要とするか(一般社団法人岡山県畜産協会)これらを踏まえて、ソルガムを家畜の飼料としてみた場合、以下のようなメリットがあります。それぞれを具体的に解説していきましょう。世界中で栽培されている五大穀物ソルガムは半乾燥熱帯地域の30を超える国々で5億以上の人々の主食となっており、世界中で栽培されている五大穀物のひとつです。米国では大豆、小麦に続く重要な穀物として、主食のみならず、家畜の飼料としても重宝されています。日本では「たかきび」や「あまきび」、「ソルガムきび」と呼ばれなじみがあり、広く栽培することが可能です。栽培管理が容易で収穫が多くコスト低減が可能日本の肉用牛生産農家の多くは零細で、コストがかかると言われ、なかでも飼料費が大きな負担となっています。家畜に飼料は不可欠であるため、いかに効率の良い良質飼料を生産できるかは重要なポイントです。肉用牛に対する飼料として、ソルガムは穀物の中でも栽培管理がしやすく、かつ収穫が大きいいという特徴があります。上記の表のように、畜産農家にとっては家畜の飼料は多く必要であり、したがってコストを低減できるソルガムには大きなメリットがあるといえるでしょう。海外と国内のソルガム栽培動向ここでは海外と国内のソルガムの栽培動向を見ていきます。ソルガム栽培は近年、タイなどアジア方面でも拡大しています。また国内では長野県や岩手県、宮崎県、また北海道でも家畜用として試験的に栽培が開始されており、将来的にはさらなる拡大が見込まれます。ここでは世界のソルガム生産量の生産国ベスト10(2024年度)をご紹介しましょう。国名生産量(単位千トン)米国9,856ナイジェリア7,200ブラジル5,000スーダン5,000メキシコ4,500インド4,200エチオピア4,100アルゼンチン3,000中国3,000オーストラリア2,200出典:USDA「World Markets and Trade」【国内】長野県長野県では人口の減少から耕作放棄地が増加。「ソルガム」は乾燥に強く成長力が高いため、省力栽培が可能で、耕作放棄地の多くがソルガムの栽培適性に合致していることから、栽培普及に力を注いでいます。2021年には信州大学を中心に「信州そるがむで地域を元気にする会」が発足されました。【国内】岩手県岩手県では、1990年頃からソルガムの研究や栽培試験が開始されています。それにより全国に先駆けてソルガムの栽培が盛んな土地となり、日本を代表するソルガムの主産地となりました。近年はソルガムの有効活用を目指しています。【国内】宮崎県宮崎県では、農業従事者の減少・高齢化等による生産力の低下や荒廃農地対策のため、2023年に新たな取り組みとして官民連携による「農業資源の地域循環型モデル構築」を開始しました。「双日株式会社」と「農業資源を活用した 資源循環事業に関する連携協定」を締結し、耕作放棄地の活用などで、バイオマス燃料原料となるソルガムの栽培実証を開始しています。国内でのソルガムへの取り組みはこちらの記事もぜひ参考にしてください。ソルガムの将来的展望ソルガムには以下に挙げるさまざまな将来的展望があります。それぞれを詳しく解説していきましょう。食害対策作物として有望自給飼料としての期待が高い食糧危機対策食害対策作物として有望ソルガムはトウモロコシと比較して、生育初期のニホンジカ食害による減収被害を受けにくく、食害対策作物として有望であるといわれています。ニホンジカは、ソルガムよりトウモロコシを好む傾向が強いことがわかっています。そのためトウモロコシの場合は、葉を一枚も残さないような被害を受けますが、ソルガムは葉を1枚以上残すので、その後の生育が有利という研究結果があります。出典:飼料作物生産圃場におけるニホンジカ食害に対するソルガムの有効性(平成21年度 「関東東海北陸農業」研究成果情報)自給飼料としての期待が高い日本は畜産における飼料のほとんどを輸入しています。農林水産省によると、2021年度における飼料供給割合は、国産が占める粗飼料が20%で、輸入が占める濃厚飼料※が80%でした。しかも輸入飼料価格は年々高騰しています。国内で自給飼料として可能なソルガムへの期待は向上しています。※濃厚飼料とは、とうもろこしや大豆、麦やふすま糠(ぬか。米ぬかなど)などを粉末状にしたもの食糧危機対策これまで解説してきたようにソルガムは、栽培が容易で安定した収穫が期待できる穀物です。近年世界規模で飼料の供給不足が問題となっているなか、安定供給を実現可能にします。家畜への飼料が安定供給できるということは、牛や羊、ヤギの安定した生育につながり、ひいては人間の食糧危機対策につながります。世界のソルガム市場ソルガム種子の市場規模は2024年に6億9,505万米ドルと推定されており、2030年には9億9,381万米ドルに達する見込みです。次いでアフリカが45%以上のシェアで最大市場であり、次いで北米とアジアが約30%のシェアを持ちます。ソルガム種子の世界主要企業は、「Advanta Seeds」、「Monsanto」、「Nufarm」、「Dupont Pioneer」で世界の約25%をシェアしています。製品別では、グレインソルガム種子が最大セグメントで、シェアは約55%です。今後も世界のソルガム市場は拡大していくことが予想されます。出典:ソルガム種子の世界市場分析と2024-2030年予測(株式会社データリソース)まとめスーパーフードやバイオマスエネルギーとしても有効であり、さらに家畜の飼料としても有望な穀物ソルガムについて詳しく解説しました。将来的な家畜飼料としての可能性の高さをご理解いただけたのではないでしょうか。ぜひ本記事でソルガムについての知見を深め、家畜の飼料としての導入を検討してみてください。