植物や動物などの生物が生み出す資源を使ったバイオマス発電。カーボンニュートラルで、地球に優しい発電方法です。スーパーフードとして知られるソルガムは、このバイオマス発電の燃料としても注目されています。そこで今回は、バイオマス発電の基礎知識とともに、バイオマス燃料としてのソルガムの強みについて、解説していきます。1.バイオマス発電とはバイオマス発電は、植物や動物などの生物から生み出される資源を使った発電方法です。バイオマス発電は再生可能エネルギーの1つで、国内の再エネの中では、太陽光、水力に次いで、発電量の多い発電方法ですが、まだあまり知られていません。出典:環境エネルギー政策研究所「国内の2022年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報)」バイオマス発電は、「3.主なバイオマス燃料5種類」で紹介するような資源や、そこから発生させたガスを、燃やして得た熱エネルギーを、電気のエネルギーに転換する仕組みです。動植物などの生物由来のエネルギーであるため、理論上、大気のCO2を増やさない、カーボンニュートラルな発電方法として、注目されています。実際、2022年度時点で、バイオマス発電の導入量は371億kWhだったのですが、2030年度には、これよりおよそ100億kWh多い目標量が設定されています。出典:資源エネルギー庁「2023年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」7.再エネ」2.バイオマス発電4つのメリットバイオマス発電が次世代の発電方法として期待を集めているのは、バイオマス発電ならではの、さまざまな利点があるからです。ここでは、以下4つの、バイオマス発電のメリットを挙げます。カーボンニュートラルな発電法である資源を有効活用できる既存のインフラを活用できる安定したエネルギー供給が可能2-1.カーボンニュートラルな発電法であるバイオマス発電の最たるメリットは、カーボンニュートラルだという点です。カーボンニュートラルとは「二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする」取り組みです。「実質」が意味するのは、ゼロにまで引き下げられないCO2の排出量を、吸収量と差し引きゼロにする、つまりプラスマイナスゼロにするということです。バイオマス発電の場合、燃料を燃焼させる際にCO2が発生します。しかし、主な燃料にあたる植物は、成長の過程でCO2を吸収しているため、差し引きゼロと考えます。出典:経済産業省「バイオマス発電ってなに?」バイオマス発電のような、カーボンニュートラルな発電による電力量を増やすことは、地球温暖化の防止につながります。2-2.資源を有効活用できるバイオマス発電の燃料の元となる資源には、以下のようなものがあります。木材家畜の糞尿食品廃棄物(残渣、生ゴミ)汚水、汚泥木材を資源とする場合には、間伐材や、林地や工場の残材、あるいは解体材や廃材といった、廃棄物が利活用できます。これらの資源は、本来であれば廃棄物として捨てられるだけのものを、バイオマスエネルギーとして有効活用できるのです。廃棄物の削減と、エネルギー創出の一石二鳥で、循環型社会の形成に貢献します。2-3.既存のインフラを活用できるバイオマス発電は比較的新しい技術で、今も研究や開発が続けられています。このように、新しい分野の発電だと、専用の処理施設や発電所など、新たなインフラ整備が必要になりそうだと考える方も多いのではないでしょうか。でも実際には、バイオマス発電を行う場合、既存のゴミ処理場や発電所といったインフラの設備や機能を活用できるといわれています。新たなインフラ整備が必要ないことで、余計な資源や手間、コストをかけずに取り組みが始められるのです。2-4.安定したエネルギー供給が可能バイオマス発電は、ほかの再生可能エネルギーよりも安定的なエネルギー供給が可能です。例えば太陽光発電や風力発電は、天候などの気象条件に大きく左右されます。しかし、バイオマス発電の電力量は、天候や時間帯などの条件が違っても、大きく変わりません。安定したエネルギー供給が可能ということは、ある程度のコントロールも可能だということです。電力の需要に合わせた供給ができれば、資源やエネルギー、コストの無駄も削減できます。ただし、バイオマス発電で安定したエネルギー供給をするには、「燃料となる資源の継続的な供給」が必要です。前提として、安定した資源確保ができる環境整備が欠かせません。とはいえ、バイオマス発電だけで、国全体のエネルギーをまかなうわけではありません。まずは、エネルギー源の選択肢の1つとなることが重要です。3.主なバイオマス燃料は3種類あるバイオマス発電の燃料は、主に以下3種類があります。簡単に紹介します。木質バイオマスバイオガスバイオディーゼル3-1.木質バイオマス木質バイオマスは、間伐材や林地・工場の残材、あるいは解体材や廃材などの木材を、薪やチップ、ペレット状に加工し、燃料として利用するものです。発電の燃料のほか、ボイラーの燃料や化学原料としても活用できます。発酵させることで、ガソリンの代替燃料となる、エタノールを製造することもできます。3-2.バイオガスバイオガスは、家畜の糞尿や、残渣、生ごみなどの食品廃棄物を、微生物の働きによってメタン発酵させて製造する気体燃料で、主に発電の燃料として利用されます。現状、国内のバイオガス発電設備の容量は、平均400~500kW程度と小規模なので、施設内や特定地域内などでの「地産地消型エネルギー」としての活用拡大が見込まれています。欧州全体では、2021 年時点で159TWh相当のバイオガスが生産されているといいます。参考:日本有機資源協会「メタン発酵バイオガス発電 に関わる情勢」3-3.バイオディーゼルバイオディーゼルは、植物性油脂とメタノールの化学反応によって精製される液体燃料で、主に軽油の代替燃料として利用されています。海外では原料として菜種油やパーム油などが使用されることが多いのですが、日本では食品との競合を避けるために、主に廃食用油が使用されています。トラックや重機、鉄道などの乗り物の燃料としてはもちろん、発電機やボイラーの燃料としても使えます。国内にも、バイオディーゼル専用の発電機や、発電システムを扱うメーカーがあります。出典:ヤンマー「バイオディーゼル発電」4.バイオマス燃料として期待が集まるソルガムとはソルガムは、アフリカ原産、イネ科モロコシ属の穀物です。世界の五大穀物の1つでもあり、世界各地で伝統的に食されてきました。近年では、グルテンフリーであることに加え、健康効果の高いGABAや難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)を含む「スーパーフード」として、注目されています。ソルガムは、食用のほかにも、飼料や資材として活用できる、持続可能性の高い作物です。さらには、バイオマス燃料としても期待を集めています。ソルガムのバイオマス活用には、主に以下の2パターンの方法があります。火力発電でバイオマス燃料として使う現在石炭を主な燃料としている火力発電において、ソルガムから作ったブラックペレットを、バイオマス燃料として使う方法です。ソルガムのペレットは、石炭と同じように扱うことができるため、発電のコスト削減はもちろん、CO2排出量の低減も期待できます。メタン発酵した茎葉から得られるバイオガスを利活用するソルガムの茎葉や、きのこ栽培などの廃培地をメタン発酵させ、そこから得られるバイオガスを、電気や熱エネルギーとして利活用する方法です。5.バイオマス燃料としてのソルガムの強みソルガムは、バイオマス燃料にぴったりの資源です。その根拠として、ソルガムが持つ、以下3つの特徴があります。コストが抑えられる収量が多く、生産性が高い土地を選ばず、栽培管理しやすいここからは、ソルガムの、バイオマス燃料としての強みを1つずつ解説していきます。5-1.コストが抑えられるバイオマス燃料としての、ソルガムの一番の強みは、低コストだということです。これまで、バイオマス発電の最たるハードルは、コストの高さだといわれてきました。コストの高さゆえ、事業化するのが難しく、政府による再生可能エネルギー全量買い取り制度(全量固定価格買取制度)という支援なしでは成立しない発電方法だったのです。ところが、ソルガムのペレット燃料であれば、石炭に引けを取らないコストで活用でき、国の支援なしでも事業化できるようになる可能性があると、試算されています。参考:キヤノングローバル戦略研究所「期待集まる「ソルガム発電」とは? 電気料金は上げずに火力発電を脱炭素へ」5-2.収量が多く、生産性が高いソルガムは再生力の高い植物で、生産性の高さに定評があります。日本国内で行われた品種改良により、成長スピードが伸び、収量が増えてきています。再生草を利用することで、1度の種まきで 2回以上の収穫が可能です。特に再生力が高い品種では、早い時期に種まきをして、穂が出る前など、早いタイミングで収穫することで、年に3回収穫できる場合もあります。収量の多さ、生産性の高さゆえ、栽培に必要な土地の面積も削減できます。5-3.土地を選ばず、栽培管理しやすいソルガムは、どんな土地でも栽培管理しやすい作物です。ソルガムには、以下2つの特徴があります。高温や乾燥に強い 雨量が少なく、作物を育てるのが難しい土地でも栽培しやすい丈夫で害虫や病気にも強い農薬の使用が少なくて済むこのような特徴から、同じ穀物である米や麦などと比べ、育てる場所を選ばず、手間やコストが少なくて済みます。そのため、人手不足などが原因で、長年手を付けられずに農地が放置される「耕作放棄地」や被災農地の解消にも、一役買うのではないかと期待されています。獣害に遭いにくく、耐倒伏性に優れるという点でも、栽培しやすい作物だといえます。6.まとめバイオマス発電は、植物や動物などの生物由来の資源を使った発電方法です。以下のようにメリットが多いことから、次世代の発電方法として、期待されています。カーボンニュートラルな発電法である資源を有効活用できる既存のインフラを活用できる安定したエネルギー供給が可能ソルガムは、以下2つの方法で、バイオマス燃料として活用できます。火力発電でバイオマス燃料として使うメタン発酵した茎葉から得られるバイオガスを利活用するソルガムの以下3つの特徴は、バイオマス燃料としての強みとなっています。コストが抑えられる収量が多く、生産性が高い土地を選ばず、栽培管理しやすい