世界の5大穀物であるソルガムは、さまざまな将来性や可能性を秘めています。食糧としてだけではなく、家畜の飼料やバイオマスエネルギーとしての活用、また茎の繊維からは車の部品まで作られています。今回はソルガムの持つ高い将来性について、さまざまな角度から解説していきますので、ぜひご一読ください。さまざまな将来性を持つソルガムとはソルガムとは、南アフリカ原産のイネ科の穀物で、品種が豊富で乾物生産性に優れており、世界の30以上の国で5億人以上の主食となっている世界五大穀物のひとつです。線虫対抗作物や、ドリフトガード作物としても利用され、成長が速いため生産量が多いという特徴があります。アメリカでは大豆、小麦に続く重要な穀物であり、家畜の飼料としても重宝され幅広く活用されています。日本では「たかきび」や「あまきび」、「ソルガムきび」と呼称されています。ソルガムが注目される背景と特徴ソルガムには多くの優れた特徴があり、そのため世界的に注目されています。代表的な特徴は以下の4つです。それぞれを詳しく解説しましょう。生産性が高いソルガムは、痩せた土地や干ばつになどに強く、厳しい耕作環境下でも生育が見込めます。日本国内でも3ヶ月ほどで大きく成育するため、効率よく利用することができ、二期作栽培も可能です。優れた栄養価ソルガムは、アレルゲンフリー、グルテンフリーという特徴があり、GABA、食物繊維、ポリフェノールを多く含有しています。そのためスーパーフードとも呼ばれています。バイオエネルギーを生産可能ソルガムはバイオマス発電燃料としても有望視されています。半炭化したソルガムの木質ペレットは、耐水性・粉砕性などに優れ、石炭と同様に取り扱うことが可能です。しかもCO2排出量は少ないため、カーボンニュートラル実現に貢献できるエネルギーとして期待されています。幅広い活用法食料やバイオエネルギーの他にも、ソルガムは繊維、医薬品成分、家畜用の飼料、有機肥料、および手工芸品などに活用が可能です。その汎用性の広さは世界的に注目されています。スーパーフードとしてのソルガムの将来性スーパーフードとしてのソルガムの将来性は非常に高いと言えます。ソルガムがスーパーフードと呼ばれる理由は、「グルテンフリーで栄養価が高い」ことと、「食糧危機に対応可能」なことです。具体的に解説しましょう。グルテンフリーで栄養価が高いソルガムは、アレルゲンフリー、グルテンフリーな食材で、健康食品としても注目されるほど栄養価が高いのが特徴です。特にGABA、食物繊維、ポリフェノールを多く含んでいます。さらにさらに、ソルガムはタンパク質含有量に優れており、100グラムあたりで、11グラムのタンパク質、28mgのカルシウム、44mgの鉄を含んでいます。食糧危機に対応可能世界では最大7億8300万人の人びとが飢餓に苦しんでいると言われています。ソルガムは、栽培が容易で安定した収穫が期待できる穀物のため、食糧危機対策に繋げることが期待できます。実際にインドネシアでは、代替食品としてソルガムをさらに普及させるために、研究開発を進めています。成功すれば、通常1ヘクタールあたり3トンの収穫量を7〜8トンに向上させることが可能と言われています。出典:世界的な食糧危機(WFP国連世界食糧計画)出典:ソルガム、インドネシアと世界の食糧危機を克服するための代替案(Voidotid)バイオマスエネルギーとしてのソルガムの将来性ソルガムは石炭と混焼が可能なバイオマス発電燃料用植物として有望視されており、すでに実験も行われています。半炭化したソルガムの木質ペレットは、耐水性・粉砕性などに優れ、石炭と同様に取り扱うことが可能です。そのため石炭火力発電におけるCO2排出量を低減できるクリーンエネルギーとしての期待が高まっています。出典:バイオマス活用における注目技術・要素③-ソルガム(一般財団法人新エネルギー財団)バイオマスエネルギーとはバイオマス(bio mass)とは、生物資源量を表す言葉です。「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」であり、それらを燃焼・分解して熱エネルギーを発生させます。バイオマスエネルギーは再生可能エネルギーの1つであり、その熱エネルギーを活用することで発電するのがバイオマス発電です。ソルガム発電への期待ソルガムを使用したバイオマス発電には多くの可能性があります。まず塩類土壌などの土壌条件が不良な場所でも栽培でき、技術開発で品種改良がさらに進めば、多くの生産が期待できます。そうすることで、発電量が変動する太陽光や風力と比べて、ソルガムによるバイオマス発電は安定した出力が得られることになります。またバイオマス市場の拡大に伴い、ソルガム発電需要への期待が高まっています。さまざまな活用方法ソルガムは幅広い活用方法があるため、産業的価値が高いのも特徴です。繊維、医薬品成分、家畜用の飼料、有機肥料、および手工芸品などに使用が可能です。ここでは茎からとれる繊維質や家畜の飼料、さらにワイン生産にも及ぶソルガムの将来性について解説していきます。繊維質を活用豊田鉄工はソルガムの茎の繊維から「セルロースファイバー(CF)」を分離して取り出し、活用しています。CFは車の樹脂製品に混ぜるガラス繊維と置き換えることが可能で、ガラス繊維より軽く、再利用しても強度が落ちないという特徴があります。CFを使った新素材は、2026年に投入する新車種で採用を目指しています。参照:トヨタ系、植物ソルガム「一挙三得」 車部品・燃料・飼料に(日本経済新聞)家畜の飼料としても有効日本の肉用牛生産農家の多くはコストがかかると言われ、飼料費が大きな負担です。そのため効率の良い良質飼料を生産することで、農家の負担を軽減することができます。肉用牛に対する飼料として、ソルガムは穀物の中でも栽培管理がしやすく、かつ収穫が大きいいという特徴があるため、家畜の飼料としても非常に有効です。ワイン生産の分野でも活躍ソルガムの品種のひとつ「スイートソルガム」は高糖分のため、エタノール生産や飼料原料に利用されています。スイートソルガムは高い栄養価を持ち、発酵プロセスにおいても魅力的な原料で、ワイン醸造用としても使用されています。スイートソルガムを使用したワインは、ユニークな風味で特に健康志向の消費者に人気です。スイートソルガムにおけるこのような用途は市場の多様化を促し、ソルガム種の需要を高めています。参照:世界のスイートソルガム種子産業市場調査レポート(Reliable Research Times)ソルガムはあらゆる地域で栽培可能世界的に注目されているソルガムは、あらゆる地域で栽培されています。ここでは日本とアメリカ、そして東南アジア、タイでのソルガムの栽培状況を解説しましょう。日本日本では、1990年頃から岩手県でソルガムの研究や栽培試験が開始されており、全国に先駆けて日本を代表するソルガムの主産地となりました。また宮崎県では、2023年に新たな取り組みとして官民連携による「農業資源の地域循環型モデル構築」を開始しています。「農業資源を活用した 資源循環事業に関する連携協定」を締結し、耕作放棄地の活用などで、バイオマス燃料原料となるソルガムの栽培実証を行っています。アメリカアメリカではソルガムは新たな健康食品として注目され、食品用に品種改良されたホワイトソルガムが主流です。テキサス州、カンザス州、コロラド州、オクラホマ州、サウスダコタ州の「ソルガム・ベルト」と呼ばれる地帯で主に生産されています。収穫は、6、7月頃からテキサス州で始まり、徐々に北上して12月頃までにはすべての州で収穫を終了します。タイ近年は東南アジアのタイでもソルガムが生産されています。タイは豊かな土壌と最適な気候条件を誇るため農業に非常に適しており、ソルガムの生育に必要な日照量と水資源が豊富です。ソルガムは約120日で成熟するので、タイでは年に最大3回収穫でき、1ヘクタールあたり約200トンの収穫が可能です。地元の農家と協力することで、地域経済の発展にも繋がっています。まとめソルガムの将来性の高さについて、あらゆる角度から解説しました。ソルガムはスーパーフードやバイオマスエネルギー、さらには工業部品としても活用が可能です。今後もさまざまな産業分野において、研究開発が進むことでしょう。将来性の高さが期待できるソルガムについて、本記事でしっかりと学び、ぜひ活用を検討してください。