バイオマスペレットとは、木くずや端材などを燃焼させやすいように圧縮加工したもので、木質バイオマス燃料の一つです。一般的に木質ペレットとも呼称されます。バイオマスペレットは二酸化炭素の排出が少なく、持続可能なエネルギーとして注目されており、市場は2032年には328億米ドルに達すると予測されています。今回は環境負荷低減に貢献可能で、将来的な市場価値の高さが期待されるバイオマスペレットについて、特徴や市場動向を詳しく解説していきます。木質バイオマス燃料のバイオマスペレットとはバイオマスペレットについて木質バイオマス燃料から詳しく解説していきましょう。バイオマスの意味は、「生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」です。近年、化石燃料の代替エネルギーや、地球温暖化対策に貢献する次世代のエネルギーとして注目を集めています。木を材料としたバイオマスのことを、木質バイオマス、または木質バイオマス燃料と呼称します。木質バイオマス燃料とは木質バイオマス燃料の材料となるものは次の通りです。 森林を伐採したときに発生する枝や葉製材工場などから発生する樹皮やおがくずなどの端材住宅の建設や解体の際に発生する木材や廃材上記のように木質バイオマス燃料は、森林から産出するものと木材加工から生じる端材や木屑、あるいは産業廃棄物由来のものと二分されます。また薪やチップ、ペレットなど種類も多いのが特徴で、同一の種類でも形状などはさまざまなものがあります。バイオマスペレットとはバイオマスペレットとは、木質バイオマス燃料の一種です。農業残渣や林業廃材などのバイオマス資源を圧縮し、小さな円筒状に成形した燃料で、主にストーブやボイラーに使用されます。またバイオマス発電にも活用されています。エネルギー効率が高く二酸化炭素の排出が少ないことが特徴です。バイオマスペレットについては、こちらの記事もぜひご覧ください。バイオマスペレットの特徴バイオマスペレットの特徴は次の通りです。燃焼時の二酸化炭素排出量が低く、脱炭素を推進できる再生可能な材料を使用しているリーンエネルギー源として、発電所での利用が可能である家庭用や産業用の暖房燃料として使用が可能である工場のボイラー燃料など、広範な産業用途に対応が可能であるなぜバイオマスペレットが注目されるのかバイオマスペレットは前述したように、二酸化炭素の排出が少ないという特徴があります。また端財や廃材を原料とするため、次世代に繋がる持続可能なエネルギーです。以下に注目されている点を、2つ詳しくご紹介しましょう。再生可能エネルギーの需要の高まり世界では地球温暖化抑止のため脱炭素化が推進されており、二酸化炭素の排出が少ない再生可能エネルギー(以下再エネ)の需要が高まっています。国際機関の分析によれば、世界の再エネ発電設備の容量は、2015年には約2,000GWに上りました。その後も需要は増加しており、2022年には約3,600GWに到達しています。バイオマスペレットは、再エネであるバイオマス発電の燃料として使用が可能です。再エネの中でバイオマス発電の比率はまだ高くはありませんが、今後再エネ需要の高まりとともに、バイオマス燃料の需要も高まることが予測されています。出典:国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案(資源エネルギー庁)世界的なカーボンニュートラルの推進バイオマスペレットが注目されている要因として、世界的なカーボンニュートラルの推進も挙げられます。二酸化炭素をメインとする温室効果ガス排出が、地球温暖化を促し深刻な気温上昇を招いています。温室効果ガス低排出型の社会の構築を目指し、資源活用の在り方や再エネの使用などに、積極的に取り組む必要があります。クリーンエネルギーとして多くの特徴を持つバイオマスペレットを積極的に活用することは、カーボンニュートラルの達成に貢献します。海外のバイオマスペレットの現状と課題海外でのバイオマスペレットの現状を、カナダ、フィンランド、東南アジアのそれぞれからみてみましょう。カナダ カナダは日本のバイオマスペレット輸入の、年間約580万トン(2023年)のうち、27%を占める第2位の輸入国です。カナダ政府は持続可能な森林管理の実現に向けて、積極的な取り組みを推進しています。そのためカナダのペレット業者は、国際的な森林管理認証や持続可能な森林イニシアチブ認証などの認定を取得し、確かで高品質な木質ペレットの安定供給を実現しています。参照:持続可能な燃料調達が課題のバイオマス発電 いまカナダ産木質ペレットに注目すべき理由とは?(スマートジャパン)フィンランドフィンランドでは2000年の石油価格高騰から、木質エネルギーへの変換に取り組んでいます。そのため、フィンランドのエネルギー構成において、木質が占める割合は2021年には30%で最も高くなりました。小規模建築の約80%、公共建築の約30%が木造のため、地元素材を利用する建築方法が確立し、森林と建築を結ぶ木材のバリューチェーンができています。フィンランドでは、ペレットよりチップ活用の方が高いといわれています。しかし地域熱利用には地元のペレット、大型ボイラーでは低価格の輸入ペレットを使用するなどの工夫した活用をしています。参照:欧州における木質バイオマス利用(『日経研月報』特集より)東南アジアベトナム、インドネシア、マレーシア、タイなど東南アジアの各国は、木質ペレットの原料となる木材資源が豊富です。しかし森林認証制度や法整備の点で、合法性や持続可能性を確立したバイオマス燃料事業の展開がまだ難しい面があります。そのため、土地の選定や運営、調達方針の確立、環境保全などの一貫した開発が課題となっています。バイオマスペレットの課題バイオマスペレットには課題も存在します。例えば、5,000kW級のバイオマス発電所を稼働させるには、年間約60,000トンのバイオマスペレットが必要です。しかしこれは一つの県の木材生産量にも匹敵する量のため、簡単ではありません。また大量に調達するためには、広範囲から収集しなくてはなりません。そうなると運搬費などのコストもかさみます。さらに森林や生物多様性の保全、人権侵害や児童労働問題度などの問題もあるといわれています。ペレット業者はこれらに取り組み、国際的な認証を取得する必要があります。日本のバイオマスエネルギーの現状「エネルギー白書2022」によると、日本で2020年度に利用されたバイオマスエネルギーは原油換算1,766万klで、一次エネルギー供給量46,395万klに占める割合は3.8%でした。ここではバイオマスペレットの生産量と輸入量について解説します。バイオマスペレットの生産量日本はバイオマスペレットの大部分を輸入に頼っています。2022年の日本国内のバイオマスペレットの生産量は約15. 8万トンでした。生産量は年々増加していますが、一方でペレットの生産を行う工場の数は減りつつあります。木質ペレットの輸入量日本のペレットの輸入量は2012年からの10年間で61倍にまで拡大しています。輸入相手国の1位はベトナムで、2位がカナダ、3位は米国です。これらの3国からの輸入量が全体の9割に上ります。特にベトナムからの輸入量は、2022年には全体の輸入量の半分以上を占めています。2023年にはベトナムから約260万トン、カナダから約158万トン、米国からは約126万トンのペレットが輸入されました。参照:2023年の木材輸入実績(林野庁)バイオマスペレット市場はどうなる?それではバイオマスペレットの市場動向について解説していきましょう。世界の木材ペレットの市場規模は2023年に1809億米ドルと評価され、2024年には1948億米ドルの価値があり、2032年までに328億米ドルに達すると予測されました。海外市場動向各地域での動向は以下のようになります。【北米】特にアメリカとカナダの市場が強い。2025年までに市場シェアは約30%に達する見込み【欧州】ドイツ、フランス、イギリスが主要。合計で約25%の市場シェアを占める【アジア太平洋地域】中国とインドが牽引し、合計で20%程度のシェアを期待【中南米】ブラジルとメキシコが注目され、約15%の市場シェアを占める見通し【中東・アフリカ】トルコとUAEが成長を促すと予測されている全体的に見ると、ヨーロッパが最大の市場シェアを保持しています。ヨーロッパでは、再エネの需要を満たすために、木材タイプのペレットやその他のバイオマスを使用した再エネ電力を生成しています。また米国は2023年に101百万トンの木材ペレットを輸出し、総輸出は954万トンでした。米国はこれらの木材ペレットを16ヶ国以上に輸出し、年間輸出総額は、2022年の15億6000万米ドルと比較して17億5,000万米ドルに到達しました。参照:バイオマスペレット 市場規模・予測 2025 に 2032、木質ペレット市場( Fortune Business Insights )日本の市場動向矢野経済研究所のバイオマスエネルギー市場に関する調査では、2021年の日本国内のバイオマスエネルギー市場規模は7,261億円で、前年度比8.3%拡大の見通しでした。そして2035年には1兆7215億円に増加すると予測されています。総務省は2023年には、木質バイオマス発電をめぐる、木材の需給状況に関する実態調査を公表するなどの取り組みを行っています。参照:バイオマス白書2023( NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク)まとめ環境負荷低減に貢献可能で、将来的な市場価値の高さが期待されるバイオマスペレットについて、概要や市場動向まで詳しく解説しました。持続可能なエネルギーとして注目されているバイオマスペレットの市場は、今後ますます拡大することが予想されます。本記事で持続可能なエネルギーとしてのバイオマスペレットの知見を深め、活用を検討してはいかがでしょうか。