「地球の未来のために、私たち企業には何ができるのだろう?」SDGs達成や持続可能な社会づくりが大切なテーマとなっている今、そうお考えの企業様も多いのではないでしょうか。そんな中、新しい選択肢として「ソルガムのバイオマス発電」が、解決のヒントになるかもしれないと、注目を集め始めています。「SDGs達成の切り札」とまで言われるこの発電方法。一体なぜ、世界中の企業が関心を寄せているのでしょうか。この記事では、ソルガムのバイオマス発電がどんな魅力を持ち、今後地球や企業にどのように役立つのかを、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。地球の未来を考える上で、きっと何か新しい発見があるはずです。ぜひ、ご一緒にその可能性を探っていきましょう!1.「ソルガム」ってどんな植物?ソルガムは、イネ科モロコシ属の穀物で、タカキビ、モロコシ、コーリャンとも呼ばれます。アフリカ原産で、高温や乾燥に強く、世界の広い地域で栽培されています。草丈は品種にもよりますが、1メートル程度のものから5メートルを超えるものまであります。穂の形も様々で、実(種実)は食用や飼料として利用されるほか、茎や葉は家畜の飼料やバイオマスエネルギーの原料にもなります。グルテンフリーの食材でもあることから、美意識の高い女性たちの間でも注目を集めています。2.【メリット】ソルガムのバイオマス発電が注目されている理由バイオマス発電とは、ソルガムを燃料として燃やし、その熱で電気を作ることを言います。出典引用:経済産業省「バイオマス発電ってなに?」これは、太陽光や風力と同じ「再生可能エネルギー」の一つで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量を実質的に増やさない「カーボンニュートラル」な発電方法として期待されています。では、なぜソルガムのバイオマス発電が期待され、注目されているのでしょうか。主な理由は5つあります。環境適応力が高いCO₂吸収量が非常に多い成長が早く収量が多い低コストで利用できる資源を余すことなく活用できるここを学ぶことで、今私たちが直面している環境やエネルギーなどの課題について、より深く知ることができるでしょう。環境適応力が高いソルガムは、暑さや日照り、少し塩気のある土地でも元気に育つ、とても丈夫な植物です。雨があまり降らない場所や、他の作物が育ちにくくなった土地でも育てやすいのが特徴。水やりの手間も少なくて済むので、管理が比較的簡単です。CO₂吸収量が非常に多いソルガムは、育つ過程で、地球温暖化の原因になる二酸化炭素(CO2)を想像以上に空気中から吸い込んでくれます。発電で燃やす時にCO2が出ますが、もともと吸った分と差し引きゼロになるイメージだと言われています。実質的に地球のCO2を増やさない、環境に優しいエネルギーなのです。成長が早く収量が多いソルガムは生育期間が比較的短く、温暖な地域では年に複数回の栽培・収穫ができる場合もあります。短い期間で大きくなり、背も高くなるため、同じ広さの畑からたくさんの量の植物を収穫できます。効率よくエネルギーの元を集められるのが大きな強みです。短期間で多くの原料を生産できることは、安定したエネルギー供給を実現する上で重要な要素であり、発電事業の経済性を高めることにも繋がります。低コストで利用できるソルガムは比較的、病気や害虫に強く、育てるのにあまり手間がかかりません。そのため、使う肥料や農薬の量を減らせる可能性があり、栽培にかかる費用を抑えやすいと言われています。種の値段も他の主要な作物と比べて安い傾向にあり、コスト面でも魅力があるのも特徴です。資源を余すことなく活用できるソルガムは、植物全体を多様な用途に活用できる点が大きな魅力です。バイオマス発電の燃料としては主に茎や葉が利用されますが、それ以外にも、穂(実)は食料や飼料、バイオエタノールの原料として利用できます。糖分を搾った後の搾りかすも、発電燃料家畜飼料堆肥土壌改良材建材や紙の原料など、多くの用途に活用できます。3.【デメリット】ソルガムのバイオマス発電普及へのハードルソルガムのバイオマス発電には5つのメリットが存在しますが、まだまだ課題があるのも現状です。ソルガムのバイオマス発電が普及するのにハードルがあると感じてしまう主な理由は3つあります。バイオマス発電自体のコストが高い熱量が低く発電効率の面で劣る支援や補助金制度が十分でないこれらの課題を克服することで、ソルガムのバイオマス発電を本格的に普及させるための鍵となるでしょう。バイオマス発電自体のコストが高いバイオマス発電は他の発電方法、特に大規模な化石燃料発電と比べてコストが高いといった懸念があります。燃料となる木材チップや農作物の残りカス、食品廃棄物などは、広い地域に点在していることが多く、それらを集めて発電所まで運ぶための輸送費や人件費がかさみます。燃料の種類によっては、発電に使う前に乾燥させたり、細かく砕いたり、形を整えたりといった「前処理」が必要となり、そのための設備投資や運転にもコストがかかります。熱量が低く発電効率の面で劣るソルガムを燃やした時に得られる熱エネルギーの量は、石炭や天然ガスといった化石燃料に比べると少なめです。同じ重さの燃料を燃やしても、少しパワーが弱いイメージがあります。収穫したてのソルガムは水分を多く含んでいることがあり、これが燃焼の邪魔をして効率を下げてしまいます。燃えた後に残る灰の量も比較的多く、これが発電設備の内部を汚して熱の伝わりを悪くしたり、掃除の手間を増やしたりする原因にもなるのです。結果として、投入した燃料から電気に変えられる割合が、最新の化石燃料発電所と比べると低くなってしまう傾向があります。支援や補助金制度が十分でないソルガム発電のような新しいエネルギーを広めるために、国が電気を一定期間、決まった価格で買い取ってくれる制度(引用:一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会)があります。しかし、この制度を使っても、事業として確実に利益が出て、安心して続けられるかというと、買取価格や期間などの条件が十分ではないと感じる場合があります。「国のルールが将来変わるかもしれない」という不安や、そもそも「どんな支援が受けられるのか情報が探しにくい」「申請の手続きが複雑で面倒だ」といった問題点も指摘されています。こうしたお金の面での支援や制度の使いやすさが十分でないと、企業が積極的に「ソルガム発電を始めよう」と思いにくく、普及の足かせとなっている面があるのです。4.ソルガムのバイオマス発電の活用事例3選実際にソルガムのバイオマス発電を活用している事例3つを紹介します。【事例①】長野県長野市「カスケード利用による地域循環モデル」【事例②】イーレックス株式会社「糸魚川発電所での混焼試験」【事例③】出光興産・東京大学・日本郵船「オーストラリアでの共同研究」ここを知ることで、どのような事業を展開すべきかのヒントを得ることができるでしょう。【事例①】長野県長野市「カスケード利用による地域循環モデル」(引用)信州大学工学部の天野良彦教授は、イネ科の穀物「ソルガム」を使い、エネルギーと食料の両面から地域社会を変える「カスケード利用」という取り組みを進めています。天野教授の構想では、ソルガムの実を食用に、茎はキノコの栽培用培地に加工。さらに、使用後の培地や食品の残り物からメタンガスを作り発電し、その際の残りカスは農地の肥料として活用します。このように「資源を段階的に余すことなく使う」のが特徴です。長野市との共同研究で、このモデルは一定の成果を上げていますが、実用化のためにはソルガムの生産量を大幅に増やす必要があります。この取り組みは、国の分散型エネルギー政策にも合致し、他の地域への応用や、日本のエネルギーと食のあり方を変える可能性を秘めていると期待されています。【事例②】イーレックス株式会社「糸魚川発電所での混焼試験」(引用)イーレックス株式会社は、持続可能な社会、特に日本の脱炭素社会実現に向け、再生可能エネルギー事業を推進しています。その一環として、ベトナムでバイオマス燃料「ニューソルガム」の大規模栽培に着手。収穫されたソルガムはペレット化に成功し、同社の糸魚川発電所にて石炭との混焼試験でも発電・送電を達成しました。今後、ソルガム栽培の継続による収量最大化とコスト削減、ペレット工場の建設検討を進めていく予定です。この取り組みは、国内外の石炭火力発電所で使用する新燃料を開発し、CO2削減と脱炭素社会の実現、さらに事業競争力の強化を目指しています。【事例③】出光興産・東京大学・日本郵船「オーストラリアでの共同研究」(引用)東京大学大学院、出光興産、日本郵船の3社は、石炭火力発電における温室効果ガス削減を目指し、バイオマス発電に適した植物「ソルガム」の共同研究を開始しました。ソルガムは、約3ヶ月で収穫でき年に複数回の収穫が見込めるうえ、乾燥に強く厳しい環境でも育ちやすい特性を持っています。食料との競合がないため、発電用燃料としての安定供給が期待されているのです。この共同研究は、2021年12月から2023年10月まで、出光興産が豪州に持つ石炭鉱山の使われていない土地で行われ、より多くの収穫量と高い発電効率が見込めるソルガムの品種を選び出し、最適な栽培方法を確立することを目指しています。将来的には、この研究成果を活かして、ソルガムを原料としたバイオマス燃料の製造、輸送、販売までの一連の流れを構築し、石炭火力発電からの温室効果ガス排出量削減に貢献していく計画です。5.今後ソルガムのバイオマス発電は重要な役割を担うソルガムは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を多く吸い取ってくれる植物です。これをエネルギーとして使う「ソルガムバイオマス発電」は、石油や石炭に代わる、環境にやさしいクリーンなエネルギー源として注目を集めています。会社にとっては、ソルガムの利用が「CO2排出を減らす」という目標達成を助け、環境に配慮した企業活動へとつながるでしょう。これまであまり使われていなかった土地でソルガムを育てれば、新しいビジネスを始めるチャンスにもなります。実際、ソルガムの種の世界的な市場規模は、2024年の約7億ドル(約1000億円 ※)から、2030年には約10億ドル(約1500億円 ※)近くまで大きく成長すると予測されており、その重要性はますます高まる見込みです。(引用)このように、ソルガムは地球環境を守りながら経済活動にも貢献し、未来の大切なエネルギーとなっていくと考えられます。※1ドル=約150円で換算した場合の参考値です。6.まとめソルガムを活用したバイオマス発電は、高い二酸化炭素吸収能力と厳しい環境でも育つ適応力から、地球に優しい再生可能エネルギーとして注目されています。成長が早く、植物全体を無駄なく資源として使える点も大きなメリットです。この技術の可能性を広げるために、普及に向けた課題の克服に、皆で取り組んでいくことが大切なのではないでしょうか。