世界の五大穀物の1つとして、古くから各国で親しまれてきたソルガム。栄養素が豊富で、アレルゲンフリーである点から、スーパーフードとしても注目されています。一方でソルガムには、食用以外にも飼料や資材などさまざまな活用方法があり、バイオマス燃料としても有用で、その持続可能性の高さも魅力的です。この記事では、ソルガムを使った、企業による取り組み事例を6つ、紹介します。ソルガムに関心のある方は、ぜひご一読ください。ソルガムはサステナビリティな作物ソルガムは、アフリカ原産のイネ科モロコシ属の穀物です。世界の五大穀物の1つで、世界各地で伝統的に食されてきました。日本には室町時代(14世紀)に「高梁(コウリャン)」として、中国から伝来したといわれています。一方で、ソルガムは、サステナブル(持続性可能性が高い)という一面も持ちます。その理由として、以下に挙げる以下4つの特徴があります。さまざまな活用方法がある栽培管理しやすい生産性が高いバイオマス活用できるくわしくは、「サステナブルな穀物「ソルガム」が解決しうる3つの社会問題」の記事をご参照ください。ここからは、日本企業による、ソルガム活用の事業を6つ、紹介していきます。光洋株式会社(高粱ボード)豊田鉄工(新素材開発)イーレックス株式会社(バイオマス燃料)東レ×ミツカワ(ロールプランター®による栽培)バイネックス(開発全般)環境フレンドリーホールディングス(開発全般)企業によるソルガム活用の取り組み【資源開発】今回は、ソルガム活用に取り組む企業を、取り組み別に2つに分けて紹介していきます。まず紹介するのは、ソルガムの資源開発に関する事業を行う、以下2つの企業です。光洋株式会社(高粱ボード)豊田鉄工(新素材開発)光洋株式会社(高粱ボード)ソルガムは約2mまで大きく成長する植物で、茎葉にも利用価値があります。しかし、現状では、食料や飼料となるソルガムの実の収穫後には、茎が廃棄されることもよくあります。「光洋産業株式会社」は、農業廃棄物となってしまうソルガムの茎の活用に着目しました。ソルガムの茎を、独自開発した専用の接着剤「KRボンド」で接着・成型し、木材の代替として開発・製品化して生まれたのが「高粱ボード」です。開発は1980年に始められ、約17年をかけて製品化、1996年には中国に現地法人を設立して、本格的な生産に乗り出しました。出典:Kirei高粱ボードの主な用途は、薄畳の芯材や店舗用の内装材などです。特に内装材としては、アメリカで「KIREI BOARD」として、広く販売されています。豊田鉄工(新素材開発)自動車部品メーカーの豊田鉄工では、石油由来の樹脂の使用量を減らすために、植物繊維からなる新素材、セルロースファイバーの開発を進めています。近年の自動車メーカーでは、エネルギー効率化のため、軽量化を重視する傾向にありますが、そこで採用される樹脂の多くは化石由来の石油で、持続可能性の低いものでした。そこで始まったのが、ソルガムから抽出したセルロースを混ぜ合わせ、石油の使用量を減らす試みです。出典:豊田鉃工㈱「ソルガムを活用した持続可能な社会へ向けた取り組み」材料となるソルガムは、中部電力や愛知県酪農農業協同組合などの異業種で連携、共同利用することで、栽培の拡大を目指しています。豊田鉄工はセルロースファイバー、中部電力はバイオマス燃料、搾汁した後は愛知県内の酪農家が牛の飼料として有効活用します。生産については、名古屋大学や豊田市も協力し、今後は産官学の5者で天然資源を活用する仕組みを構築する狙いです。とはいえ、自動車部品での採用については、強度やコスト面での課題が残ります。現時点では、同社が展開する、移動用小型車「Comove(コモビ)」での使用を検討しているといいます。出典:豊田鉄工「移動用小型車「Comove」公式サイト開設」企業によるソルガム活用の取り組み【エネルギー含む開発事業】次に、ソルガムを活用したバイオエネルギーを含む、開発事業に取り組んでいる、以下4つの企業を紹介します。イーレックス株式会社(バイオマス燃料)東レ×ミツカワ(ロールプランター®による栽培)バイネックス(開発全般)環境フレンドリーホールディングス(開発全般)イーレックス株式会社(バイオマス燃料)新電力会社のイーレックス株式会社は、ベトナムでバイオマス発電事業を推進しています。出典:イーレックス具体的には、以下のような事業に取り組んでいます。新設バイオマス発電所の建設石炭火力発電所のトランジションニューソルガムを始めとした新燃料開発東南アジアにおける研究開発拠点としての「R&Dセンター」の創設ソルガムは、条件の悪い土地でも栽培でき、約3カ月と早生で、ベトナムの気候では年三期作が可能であることを見越し、すでに大規模栽培に踏み切っています。出典:イーレックス「バイオマス燃料開発・活用の取り組み -ソルガム栽培の進捗および糸魚川発電所での混焼のお知らせ-」収穫したソルガムの一部は試験造粒でペレット化しており、2023年末には同社の糸魚川発電所で、石炭との混焼試験を実施。設備トラブルなく、発電・送電に成功しました。今後もソルガム栽培は継続予定で、ペレット工場の建設に向けた検討も進めています。ベトナムにおけるソルガムの収穫量は、年30万トンまで増やす予定で、これを発電量に換算すると、一般家庭3万5000世帯分の年間需要に匹敵します。ソルガムは加工して日本に運び、自社の発電所などで使う予定です。ソルガムの燃料開発や大規模栽培は、脱炭素への実現はもちろんのこと、ベトナムでの雇用の創出や、地元経済の発展にも寄与できる点においても、大きなメリットとなります。東レ×ミツカワ(ロールプランター®による栽培)化学メーカーの東レ株式会社と、ニット生地の製造・販売会社のミツカワ株式会社は、筒状の農業資材「ロールプランター®」による実証栽培を南アフリカ各国で行い、砂漠や荒廃地などの農地化・緑化に貢献しています。「ロールプランター®」は、東レの開発した植物由来の繊維を、ミツカワの技術で編んだもので、土を充填して土地に並べ、プランターの間に種をまくことで、種子を根付かせます。本来、植生が困難な砂漠や荒廃地、コンクリート上でも、農作物を育てることができます。出典:国立環境研究所「ロールプランター®で砂漠を農地に」南アフリカへの展開の契機となったのは、2010年開催の展示会で、南アフリカ大使館関係者がロールプランター®の技術に着目したことでした。南アフリカでは鉱業が盛んで、有毒な化学物質等を含む鉱山残土の集積地(マインダンプ)による土壌汚染と、近隣住民への健康被害や農作物の汚染などの問題を抱えていました。そこで現地のマインダンプにおいて、ロールプランター®を用いた小規模なデモ実験を実施したところ、緑化に成功。2012、2013年度には、経済産業省「途上国における適応対策への我が国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査」の採択事業となりました。2013年からはUNDP(国連開発計画)の「包括的な市場の開発(IMD)プロジェクト」として、東レ、ミツカワに加え、灌水メーカーのネタフィムジャパンと共同で「農業振興ビジネスモデル」の開発を進めています。2016年にはバイオ燃料の原料として、ソルガムの栽培を開始。現在は、現地におけるロールプランター®の生産体制を構築中です。現地政府・関係者への啓発や、現地ワーカーへの指導も行い、アフリカ諸国でのさらなる展開を目指しています。バイネックス(開発全般)バイネックス株式会社(BINEX)は、次世代電池の研究・開発を行う、株式会社スリーダムアライアンスが2021年に設立した会社です。出典:binex設立の目的は、食料問題や環境問題、エネルギー問題などに取り組み、バイオメタノールのバリューチェーン構築です。ソルガムに関連するものでは、具体的には、以下のような事業に取り組んでいます。ソルガムの育種開発・栽培ソルガム子実の食料供給ソルガム葉茎などの残渣を原料とするバイオメタノール製造と供給参考:株式会社スリーダムアライアンス「バイネックス株式会社(BINEX)設立のお知らせ」バイネックスは、バイオ燃料の製造に適したソルガムを、東京大学と共同開発しました。開発した品種は信州ソルガムと共同栽培し、食品や飼料のほか、バイオペレット、バイオメタノールなど、バイオマスエネルギーの開発にも取り組んでいます。国外では、アジアや中南米などの19カ国で、試験栽培の実績を積んでいます。2024年にはタイで大規模栽培を開始。オーストラリアでも小規模トライアル栽培を始めています。環境フレンドリーホールディングス(開発全般)環境に関わる事業をメインとする環境フレンドリーホールディングスでは、前身の「FHTホールディングス」だった2022年から、資源エネルギー事業に取り組んでいます。出典:EFバイオ資源エネルギー事業では、バイオマス燃料開発や飼料・食料生産への展開を見越して、ソルガム種子の開発や生産、販売を行っています。現状はオーストラリアに設立した子会社「Bioghum Pty ltd(EFバイオ)」で、ソルガムの種子生産を行い、オーストラリア国内への販売に加え、海外輸出も進めています。今後は、用途に応じたソルガム種子供給のほか、ソルガムのカスケード的利用(未利用分や残渣の活用)により、食料や飼料、燃料生成のほか、新たな商品開発を進める方針です。前述した、2023年にイーレックス糸魚川発電所で行われた、石炭との混焼試験の際に使われたソルガム種子も、「Bioghum Pty ltd(EFバイオ)」が提供したものです。参考:日経会社情報DIGITAL「環境フレンドリーホールディングス[3777]:ソルガム燃料を用いた石炭火力発電所の温室効果ガス削減に向けた実証試験について 2024年2月15日(適時開示) 」まとめ今回は、以下7つの、ソルガムを活用した企業の事業(取り組み事例)を紹介しました。光洋株式会社(高粱ボード)豊田鉄工(新素材開発)イーレックス株式会社(バイオマス燃料)東レ×ミツカワ(ロールプランター®による栽培)バイネックス(開発全般)環境フレンドリーホールディングス(開発全般)紹介した中でも、多くの事業が、現在進行形で展開を続けています。今後もさまざまな企業によって、ソルガムの開発が繰り広げられていくことでしょう。