脱プラスチックやSDGsへの貢献が求められる中、何から着手すべきかお悩みではありませんか。現に「紙だと使用感が悪く、ふにゃふにゃになってしまう」といった不便さ1位にもなっており、お客様からの不満に頭を抱えるケースは少なくありません。そんな中、第3の選択肢として注目されているのが、植物由来の「バイオマスストロー」です。本記事では、今さら聞けないバイオマスストローの基礎から、企業が導入する本当のメリットまでを紹介しています。わずか5分で、貴社の課題解決に向けた具体的なヒントがきっと見つかります。バイオマスストローとは?バイオマスストローとは、トウモロコシやサトウキビといった植物由来の再生可能な資源を主原料として製造されたストローです。出典引用:日本ストロー株式会社「バイオストロー®」2022年に施行された「プラスチック資源循環促進法」により、企業には使い捨てプラスチック製品の削減努力が求められています。バイオマスストローの導入は、この法規制への具体的な対応策となるだけでなく、企業の環境に対する姿勢を明確に示す強力な手段となります。バイオマスストローへの切り替えは、単なるコストではなく、未来の企業価値を高める戦略的な投資と言えるでしょう。【メリット】なぜバイオマスストローは注目されているではなぜ、バイオマスストローが近年注目されてるのでしょうか。この理由には5つのメリットがあるからです。化石燃料の使用を削減できるカーボンニュートラルの貢献ができる環境への負荷が減るプラスチックごみが削減できる飲み心地や使い勝手が良い化石燃料の使用を削減できる原料にトウモロコシやサトウキビなどの植物を利用するため、石油などの枯渇性資源の消費を抑えることができます。有限である石油への依存から脱却し、毎年再生可能な植物を資源とすることで、より持続可能な製品供給の仕組みを作ることを可能にします。これは、企業の安定した事業活動にも繋がる重要なメリットです。カーボンニュートラルの貢献ができる植物は成長過程で光合成によりCO₂を吸収します。その植物から作られたストローを焼却処分する際にCO₂が排出されても、排出量は吸収量を上回らないため、全体として大気中のCO₂濃度は上昇しないと言われています。これが「カーボンニュートラル」の考え方であり、脱炭素社会の実現に貢献するのです。環境への負荷が減る海洋プラスチックごみは何百年も分解されず、マイクロプラスチックとなって生態系を脅かします。この問題に対し、生分解性バイオマスストローは具体的な解決策の一つです。微生物の力で水と二酸化炭素に分解されるため、環境中に長く残存せず、地球への負荷を大幅に減らすことができます。プラスチックごみが削減できるそもそも石油由来のプラスチックを使う機会を減らすこと自体が、環境問題への大きな貢献です。プラスチック資源循環促進法でも、使い捨てプラスチック製品の使用を合理化することが求められています。バイオマスストローへの切り替えは、こうした国の動きにも対応し、企業としての社会的責任を果たす具体的なアクションになります。飲み心地や使い勝手が良い紙ストローのふやける味が変わるといった課題に対し、バイオマスストローは従来のプラスチック製に近い飲み心地や耐久性を持つ点が大きなメリットです。お客様の満足度を損なうことなく、スムーズに環境配慮型製品へ移行できます。店舗のオペレーションを変えずに、顧客体験と環境配慮を両立できる現実的な選択肢です。【デメリット】バイオマスストローを導入する際の3つの注意点バイオマスストローは魅力あるものと感じてしまいますが、実は3つのデメリットも存在します。コストが高い他産業との競合が生じる生産時の環境負荷が生じるここを学ぶことで今後の課題が浮き彫りになるだけではなく、「どう対応していくのか」を考えるキッカケにもなります。バイオマスストローを導入するまでに、メリットとセットで必ず覚えておくようにしましょう。コストが高いバイオマスストローは、既存のプラスチックストローに比べて価格が高いのが現状です。原料調達や製造工程が複雑なため、販売価格はプラスチック製の2〜4倍程度になることも珍しくありません。これは、原料の栽培・収集、複雑な製造プロセス、そしてまだ発展途上であるサプライチェーンによるものです。このコストの壁は、特に大量消費する飲食店や事業者にとって、導入の大きな壁となっています。他産業との競合が生じるサトウキビやトウモロコシなど、食料としても利用される作物を原料にすることは、倫理的な課題をはらんでいます。世界には食料不足に苦しむ人々がいる一方で、食べられるはずの作物が工業製品の原料として使われるからです。今後、バイオマスプラスチックの需要が世界的に急増すれば、原料作物の価格高騰や食料不足を招くリスクがあります。この「食料か、燃料・原料か」という問題意識から、近年では稲わらや木材チップなど、非可食部を利用した第二世代バイオマスの研究開発が急がれています。出典引用:神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科 新井俊陽「非可食バイオマス由来糖と糸状菌による糖化酵素製造技術を基盤とした循環型タンパク質生産プラットフォームの展開」この技術の実用化とコストダウンが、バイオマス製品が本格的に普及するための鍵を握っています。生産時の環境負荷が生じる「植物由来=エコ」と一概には言えないのが、この問題の複雑な点です。原料となる作物の大規模栽培は、広大な農地を必要とし、そのために森林が伐採されれば本末転倒です。栽培過程で大量の水資源を消費したり、化学肥料や農薬が土壌・水質汚染を引き起こしたりする可能性も指摘されています。サプライチェーン全体、つまり原料の栽培から製造、輸送、廃棄までのライフサイクル全体で評価し、総合的に環境負荷が低い製品かを見極める視点が必要です。【事例】実際にバイオマスストローを活用している4つの企業バイオマスストローのメリット・デメリットを総合的に判断し、実際に導入している4つの企業をここで紹介していきます。スターバックスコーヒージャパンタリーズコーヒージャパンすかいらーくグループセブンイレブンジャパン「どのような過程で、どういう結果が出ているのか」を参考にしながら、事業への導入の際に検討してみてください。スターバックスコーヒージャパンスターバックスコーヒージャパンは、バイオマスストローを2025年1月から全国導入し始めました。紙ストローの「ふやけやすい」「味が変化する」などの課題や、利用者からの使い勝手の要望を受け、カネカ製「Green Planet」というバイオマス度99%の生分解性素材を採用。アイスドリンクやフラペチーノ用ストローとして全国の店舗へ順次導入しています。石油由来プラスチックの全廃が進む中、従来のFSC認証紙ストローと比較して廃棄物量をおよそ半分に削減し、CO₂排出量もライフサイクル全体で低くなっています。紙ストローにあった不満を解消し、なめらかな口当たりや形状保持性が高評価を受けています。タリーズコーヒージャパンタリーズコーヒージャパンは、2019年から全国の全店舗でバイオマスプラスチックを25%配合したストローを導入し、プラスチック使用量およびCO₂削減に取り組んでいます。導入時には、ストローの長さも現行品より3cm短くし、切り替えと合わせてプラスチック使用量を約30%削減する工夫を施しています。他にも環境配慮の取り組みとして、コーヒー豆の皮「シルバースキン」配合の紙ナプキン導入タンブラー利用者への割引テイクアウト袋へのバイオマス素材採用なども進めています。このような取り組みにより、企業としてプラスチック廃棄物とCO₂排出の削減、持続可能な社会の実現に貢献しています。すかいらーくグループ2019年から、従来のプラスチック製ストローを店舗常設から外し、利用希望者には植物由来のバイオマスストローを提供していました。これにより、2018年の年間約1億本だったストロー使用量は、2020年には約1,100万本まで大幅に減少しました。2022年1月からは、さらに環境配慮を進めるため、FSC認証の紙製ストローへ段階的に切り替えを実施しています。2026年までには使い捨てプラスチック使用量を2020年比で50%削減、2030年までにゼロを目指す目標を掲げています。セブンイレブンジャパンセブンイレブンジャパンは、2019年8月から高知県で、100%植物由来で生分解性のバイオポリマー「PHBH®」素材を使ったストローを「セブンカフェ」用に試験導入しました。試験導入の後、2019年11月からは北海道・北陸・関西・中部・四国・九州・沖縄の約1万店舗で「PHBH®」ストローに、首都圏・関東・東北の約1万1,000店舗ではFSC認証紙ストローを導入しています。店舗で配布するカトラリーでも、バイオマス素材を30%配合したスプーンやフォークを活用しています。バイオマスストローの価格事情を深堀りバイオマスストローの導入を検討する事業者であれば、経済的な側面を無視することはできませんよね。ここでは、バイオマスストローにかかるコスト事情について具体的に紹介していきます。ここを読むことで、導入に必要な予算規模が明確になり、費用対効果に基づいた最適な意思決定が行えるでしょう。プラスチックストローや紙ストローと比べて、価格はどれくらい高いの?バイオマスストローの価格は、最も安価なプラスチック製に比べると高価で、紙ストローと同等か、やや高くなるのが一般的です。種類プラスチックストローを「1」とした場合の価格比プラスチックストロー1バイオマスストロー約2~3倍紙ストロー約5倍生分解性ストロー約4~8倍市販例では500本入りで約639〜1,428円(1本あたり約1.3〜2.8円)と、プラスチックストローより約2〜3倍高い価格帯が一般的です。大量生産によるコストメリットが出やすいプラスチックに対し、バイオマスストローは原料調達や製造工程が複雑なため、価格が高くなる傾向にあります。コストを払ってでも導入する価値はあるの?価格の高さにもかかわらず、バイオマスストロー導入にはそれを上回る価値があります。最大の価値は、社会貢献をするという「企業イメージを向上させる点」です。「脱プラスチック」や「SDGs」への具体的な取り組みは、環境意識の高い消費者や取引先からの共感を呼び、ESG投資を重視する投資家へのアピールにも繋がります。アピールだけではなく、紙ストローの「ふやける」という顧客の不満を解消し、満足度を維持できる点も大きなメリットにも繋がります。コストは単なる支出ではなく、ブランド価値を高め、持続的な成長を実現するための極めて戦略的な「未来への投資」なのです。【5分でわかる】バイオマスストローとは?最初に読むべき基礎知識:まとめバイオマスストローは、環境配慮と利用者の満足度を両立できる優れた製品です。一方で、真にカーボンニュートラルな資源となるためには、製造・輸送工程におけるエネルギー源の脱炭素化や、原料の持続可能な管理体制の構築といった、解決すべき課題も残されています。これらの課題をクリアしていくことが、今後のバイオマスストローの普及の鍵と言えるでしょう。