近年、海外の「WAGYU」ブランドが世界で注目をされているのをご存じでしょうか。「WAGYU」ブランドとは、日本の和牛の血統をもとに海外で独自に発展した牛肉の総称です。各国の飼育環境や品種改良により、独自の進化を遂げています。今回は進化する「WAGYU」ブランドについて進化の背景や特徴、そしてタイをはじめとする海外のWAGYUブランドについて詳しく紹介します。「WAGYU」に興味のある方は、ぜひご一読ください。「WAGYU」ブランドの進化とは?「WAGYU」ブランドは、日本の和牛を起源としながら、世界各国で独自の進化を遂げており、グローバルブランドへと発展しています。ここでは「WAGYU」の定義や起源、そして特徴を詳しく解説していきましょう。WAGYUの定義と起源日本の「和牛」は牛肉業界において「国産牛」や「外国産牛」と区別されており、重要なブランドです。農林水産省が定める4品種(黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種)および、その交雑種が「和牛」になります。さらに日本国内飼育された牛のみが、「和牛」と表示することが可能という厳しい基準があります。海外の「WAGYU」の起源は、当然ながら日本の「和牛」です。主に1970年代から90年代にかけて日本から輸出された和牛の遺伝子をもとに、海外で品種改良・飼育された牛肉を指します。日本国外では「WAGYU」と表記して販売されていますが、日本の「和牛」とは明確に区別されているのが現状です。WAGYUの特徴それでは「WAGYU」の特徴はどのようなものでしょうか。ここでは以下の4つの視点で解説していきます。赤身と脂肪のバランスが良い日本産和牛に比べて霜降りは控えめです。けれど赤身の旨味が強く、脂肪交雑も安定しているといわれています。価格が比較的安価日本産和牛に比べて価格が比較的安価で、コストパフォーマンスの良さから世界中で人気が拡大しています。交雑種が多い「和牛」は、両親がともに和牛の純血種であることが条件ですが、海外の「WAGYU」は、和牛と他の品種(ホルスタインなど)を交配させた交雑種が多いことが特徴です。飼育環境の違い日本産和牛が穀物中心の飼料で肥育されるのに対し、海外産(特にオーストラリア)は、牧草中心に長く飼育されることが特徴です。そのため日本の飼育環境と異なるため、品質や風味に違いが生じます。日本産「和牛」と「WAGYU」の違いここでは日本産和牛と「WAGYU」の違いをまとめました。項目日本産和牛WAGYU(外国産)血統純血種のみ(黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種)和牛血統を含む交配種もあり生産地日本国内海外(アメリカ・オーストラリア・タイなど)品質管理厳格な基準と個体識別制度国によって異なる肉質霜降りが多く柔らかくて旨味が強い霜降りは少なく、赤身がメイン表記「和牛」「WAGYU」海外に広がる「WAGYU」ブランド海外では寿司やラーメンなどの日本食が、人気でブームになっています。和牛もその流れで人気が向上しました。しかし日本の「和牛」は、ステーキやすき焼きなど高品質・高級志向での味わいを楽しむものが多く、顧客は富裕層が中心です。そのため、「和牛」より安価に仕入れられる「WAGYU」が注目され、販路が拡大するようになりました。主な海外「WAGYU」ブランドは次に述べる通りですが、現在もっともシェアを誇っているのはオーストラリアです。主な海外WAGYUブランドの現状海外「WAGYU」ブランドは、各国で独自に発展しています。これまではアメリカ・オーストラリア・イギリスなどの生産や開発がメインでした。しかし近年では、タイなどの東南アジアでの「WAGYU」ブランドの発展も目覚ましいものがあります。アメリカ1970年代以降に日本から輸入された和牛の遺伝子をもとにして、米国独自の「American Wagyu」が誕生しました。主に黒毛系統の肉用牛・牛肉が生産されています。米国WAGYU協会(AWA)では、遺伝子評価と登録制度を運用し、生産・繁殖成績の向上に取り組んでいます。また生産は小規模分散型がメインで、全米に生産者が散在しているため、売買の手段としてオンライン・オークションが重宝されています。オーストラリア豪州の「WAGYU」は、独自の改良増殖が行われてきており、肉用牛全体に占める飼養頭数などの割合は年々増加しています。2022年の豪州国内の加盟生産者全体の「WAGYU」飼養頭数は49万2000頭であり、豪州の肉用牛全体の2.1%を占めました。「豪州WAGYU協会」は、世界各国から研究者・団体関係者・生産者を招き、国際的な会議を実施するなど活発な取り組みを行っています。近年、オーストラリアの「WAGYU」ブランドは世界的に知名度が上がり、多くの国でオーストラリア産の「WAGYU」が販売されるようになりました。イギリスイギリスの「WAGYU」は、オーストラリア産「WAGYU」の定義と同一で、生産量は徐々に拡大を見せています。2023年における出生頭数において、「WAGYU」純粋種が2,203頭、「WAGYU」交雑種が3万3,347頭でした。「WAGYU」の9割以上が交雑種であり、2023年の出生頭数は、前年比約2倍で2019年と比較すると6倍強と大幅に増加しており、今後も向上することが見込まれています。参照:独立行政法人農畜産業振興機構 参照:JETRO「生産拡大が進む英国産「Wagyu」の評価と将来性」タイWAGYUの台頭海外の「WAGYU」のなかで、近年タイ産の「WAGYU」が注目されていることをご存じですか。ここではタイにおける「WAGYU」の導入の歴史や、発展、今後の展望について解説していきます。導入と発展タイはもともと乳用・役用牛の生産が中心でした。そのため肉質も和牛のように霜降りが強いものではありませんでした。しかし1970~80年代にかけて、黒毛和種を中心とした和牛精液や種牛がタイに導入され、交雑種(和牛×在来牛・ブラーマンなど)の育成が始まりました。その後、タイの高温多湿な気候に適応させるため、和牛の純血ではなく、ブラーマン種やホルスタインとの交雑が頻繁に開始されます。ブラーマン種は暑さや病気に強いため、和牛の肉質と組み合わせることで「高級肉+強健性」を高めることを狙うなど、タイでの「和牛」の改良と定着が促進されました。その後、「タイWAGYU(Thai Wagyu)」という呼称が広がり始め、バンコクや観光地の高級レストラン向けに供給を開始、徐々にタイの「WAGYU」の重要は高まっていきました。「プレミアム和牛」として需要拡大タイ国内の日本食レストランは2022年に5,000店を突破しており、和牛を使った料理の提供が増え、消費者の認知度と需要が増加していきました。タイ国内でも「プレミアム和牛」の需要が向上し、観光産業や日本食レストランの成長に合わせて、純血和牛に近いタイ和牛の飼育が拡大していきます。タイ国内で生産された「WAGYU」には、輸入和牛よりもコストが抑えられるというメリットがありました。また国内生産であることから新鮮な肉を食べられるという利点も大きく、次第に「タイWAGYU」としてブランド化していきます。タイWAGYUの現状2025年時点で、「タイWAGYU」市場は成長軌道にあり、2031年までにさらなる拡大が予測されています。フルブラッド、純血種、交雑種の3タイプの「WAGYU」が流通し、小売・卸・直販など多様なチャネルで展開してくことが予測されています。また世界の和牛市場は2025年に274億米ドル規模とされ、2035年には4789億米ドルに達する見込みです。本来の日本の和牛市場はもちろんのこと、今後「タイWAGYU」市場も連動し、大きく発展していく可能性は高いでしょう。飼料に最適なソルガムとは「WAGYU」の飼料は、サステナビリティの観点からソルガムや飼料用とうもろこしなどの活用が推進されています。また循環型畜産(バイオガス利用)との連動も広がっています。ソルガムは世界5大穀物のひとつであり乾燥に強く再生力が高いなど、飼料作物として非常に優れた特性を持っています。また光合成によるCO2吸収量が多く、成長過程で温室効果ガスの削減に寄与するといわれており、サステナブルな飼料として世界で期待されています。「WAGYU」ブランドの展望と課題「WAGYU」には、今後、日本の本来の「和牛」とどう区別していくのかという課題があります。「WAGYU」の展望を語る前に、日本の「和牛」ブランド保護についても述べる必要があるでしょう。日本からの遺伝資源の流出は、和牛の品質やブランドイメージの毀損につながり、国内外での競争力低下を招く恐れがあります。実際に2018年に和牛の遺伝資源が中国に不正に持ち出されようとしたことがありました。そのため日本では「和牛」の遺伝子を知的財産的価値のあるものとして、保護強化を開始しました。それにより「家畜改良増殖法」の改正と「家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律」の制定がされました。今後日本は「和牛」の知的財産を守るために、不正流出防止にさらに力を入れていきます。とはいえ、すでに海外「WAGYU」ブランドは、各国独自の生産・ブランディング戦略により多様化が進み、将来的に市場もさらに拡大するとことが予測されます。今後は「WAGYU」を広く展開するためには、原産地表示や遺伝子情報の明確化など、ブランド保護の取り組みが重要となるでしょう。日本の「和牛」ブランドと海外「WAGYU」ブランドは明確に区別される必要があります。まとめ本記事で解説した「WAGYU」についての内容は以下になります。海外「WAGYU」ブランドはどのように進化したのかWAGYUの特徴やどこの国で生産されているのか 海外「WAGYU」ブランドの現状日本産「和牛」と海外「WAGYU」の違いl注目されているタイ「WAGYU」とはどのようなものなのか、その背景と現状「WAGYU」ブランドの展望と課題日本の和牛の遺伝資源を活用した海外「WAGYU」ブランドは、世界的な日本食ブームとともに、将来的にさらに需要が拡大していくでしょう。日本の「和牛」をしっかりと保護し区別化を図りながら、消費者に求められる「WAGYU」の開発や、相互的な利益の拡大を図ることが重要な時代を迎えています。